ミルクキャンディ

 

「甘い…」

深く、舌をからめるキスを止め、唇をはなして、少しあがった息のまま我愛羅が呟いた。

唾液で濡れた口元をぬぐう。

「あ、わり。さっきまでこれ喰ってたからさー…」

ごそごそと、ポケットから小さな袋を取り出して、ナルトは中身を手のひらに転がした。

袋の中身は乳白色の小さなあめだま。うっすらと甘いミルクのにおいがする。

「今日、駄菓子屋で見かけてついさ。なんか、懐かしいカンジだろ?」

「いや、あまり食べたことがない。」

そう言うと、ナルトは少しきょとんとしてから、柔らかく笑っていった。大切なことを打ち明けるような顔で。

「昔さ、イルカ先生がよくくれたんだってばよ。コレ。ほめてくれるときとか、内緒だぞって、ごほうびで。」

ひとつ、つまんで口にほおりこむ。

「子供あつかいするなよなー、とか思ってたけど、やっぱうれしくてさ。オレにとってはそーゆー思い出の味」

「そうか…」

甘いミルクのにおいがするやさしい思い出。

うらやましさと、僅かなねたましさ。それを感じる疾しさに耐え切れずうつむくと、ナルトのあたたかい手が頬にふれてそっと顔をあげさせた。そのまま、二度目のキスを仕掛けてくる。

ねだるように、うすく唇をひらく。やわらかい舌の感触といっしょに小さな甘いかたまりがそっと口の中におしこまれた。甘い、甘いやさしい味。

「………甘い…」

「幸せのおすそわけー。」

へへっ、と笑った顔がまた近づいてきて、もう一度目を閉じる。

くりかえす甘いミルクの味のキス。

ミルクの味のあめを食べるたび、思い出しそうだ…と熱にうかされたような頭の隅で思いながら、我愛羅はナルトの背に腕をまわした。

 

                            fin