仕事中、本当にまれにすいっと向けられる視線の先にあるのはいつも窓。

大抵は伝令用の鳥の影がそこを横切る時だ。

いつもどおりの無表情でさりげなく窓に顔を向ける。

我愛羅が待っているものに俺は気が付いている。手紙。それも火影からの。

三年前、旅立っていったあいつが今どうしているか、本当に些細な情報。

たぶんこいつはそれを心待ちにしている。

まるで片思いみたいに。

それが幸せなのか不幸せなのか解らねえけど、少なくても幸せそうに俺には見えてる。

いいじゃん。人間らしくてさ。

モノの用に扱われ続けたお前があいつと会ってから見せるようになった、人間らしい表情を見るたび、あいつに感謝せずにはいられない。そんなことはお前にも、あいつにも言えはしねえけど、テマリとは時々そんな話してる。本当によかったってさ。いろんな意味で。

たぶん、俺には謝らなきゃいけないことが山のようにあると思う。どうしようもなかったことだけど、俺はずっと忘れてた。お前が子供であることを、弟であることを、ヒトであることを。恐れ、見捨てて、切り捨て、それに気付かないふりをしつづけた。

周り中にそんな風に扱われ続けて、お前がヒトであれるはずが無かったんだな。

そんな当たり前のことに長いこと気付かなかった。

あいつに会って変わったのはお前だけじゃないんだ。お前が変わって、俺が、テマリが、全てが少しずつ変わっていく。気付かないほどにゆっくりと。

そうやって、変わったこの世界がお前にとって居心地のいい場所になるといい。心からそう思う。お前がしてきた精一杯の努力を、俺は知っているから、さ。

俺達は正しい意味で兄弟じゃなく、これからも、きっとそうはなれねえだろうけど、一番近い味方でいたいっていつも思ってるんだぜ?いつか、いつでもいい、そのことに気付いてくれよ。

罪は消えない。でもさ、贖うことはできるはずだ。

俺もお前も。誰もが。そう、俺は信じる。

 

お前が見ている四角く切り取られたような空は憎らしいほど青くて、真直ぐなあいつの目を思い出させる。

はやく、戻ってくると良いよな。どんな形でも。

お前が幸せなら、いい。

あいつが元気でいることが、今のお前のその顔を作っているんだろ?

だから、俺もそれを願ってやる。

小さくノックの音が響いて、お前は書類に目を戻し、またいつもの無表情に戻る。俺は扉をあけるためにドアに向かう。

四角く切り取られた空は今日もとてもきれいだ。

 

                               fin

 

 

 

スクエア