ソファの上で我愛羅は持ち込みになってしまったらしい書類を読んでいる。

ソファの下でオレはソファにもたれて本を読んでいる。

時々見上げると、難しい仕事用の顔のあいつ。
真剣な緑の目も、眉間によったしわも、意外と長いまつげが落とした影もいいな、って思う。

些細なことでこみあげてくる愛しさに、自然、笑顔になっているのが分かった。

じゃまをしないように、そっと立ち上がって台所に行く。
一人だったら冷蔵庫の中の麦茶ですますけど、我愛羅は冷たいものが、あんまり好きじゃないから。
やかんを火にかけて、ちゃんと茶をいれる。買ってきたばかりの煎茶をあけて、鼻歌まじりに、急須にいれて、湯を注ぐ。ごそごそと棚をあさって、二人分の湯のみを出して。熱い煎茶を注いだそれを、まあいいか、と両手で持って、のんびりとソファにむかう。

背後に立つと、書類に夢中だった我愛羅は、オレの気配に気付いて、なんだ?っていうかんじで、オレを見上げてくる。するどさのぬけた、素の表情が好きだ。

両手に茶碗を持ったまま、おおいかぶさるみたいに、触れるだけのキスをする。

「なんだ?」

「お茶。飲むだろ?」

ちょっと湯のみを上げて笑うと、それを見とめたこいつが柔らかく破顔した。

「ああ。悪いな」

のばされた白い手に湯のみを渡してやり、ぐるっとソファをまわって隣にすわる。

自然と空けられているオレの居場所。そんなささやかな事が、うれしくてたまらない。

甘えるみたいに寄りかかったら、重い…とぼやいて、それでもそのままオレをくっつけて、お茶をすすりながら、書類をめくってる。

「仕事、まだおわんねえの?」

「これだけ読んだら…」

残り厚さ3ミリくらいになった紙束を振って見せて。まあ、あと30分くらい、このままでいるのも悪くない。

ずるずると、頭を落として、我愛羅のひざの上にのっける。

「おい…」

「へへ…」

呆れたような声に笑って見せると、我愛羅はため息をついて、書類に目を戻しながら、オレの頭をそっと探った。細い指の感触が気持ちいい。

二人でいられる大事な時間。

オレの一番幸せな時間。

これからもずっと、こんな時間を重ねていけたらいいと思って、オレは目を閉じた。

 


ソファ

fin